もう一つ、同じような事例を取り上げてみます。
ストレスと膝の問題
やはり50代で、女性の営業職の方のケースです。
営業の仕事が好きで、顧客からも人気があり、とてもバイタリティがある女性です。
或る日のこと、仕事中になんとなく膝が痛いと思っていたら、どんどん膝が膨れ上がり、歩くこともままならなくなってしまったそうです。
それでも翌日には会社に出社したそうですが、痛みがあまりにも強いため、仕事場の近くにあるクリニックを受診したそうです。
この方の場合も「変形性膝関節症」と診断され、簡単には治らないとのことでした。鎮痛剤と消炎剤の湿布薬をもらったものの、痛みはあまり引かないとのことでした。
久しぶりにその方から電話が入り、そうした一連の話を聞き、翌日に早速来てもらいました。
ストレスが抜けなくなったことが膝の問題の引き金
操法室に入るところから足を引きずり、痛みに耐えかねていました。
この方も最初に膝と周辺を確認しましたが、そのままうつ伏せになってもらい、背中の状況を読んでいきました。
思った通り、体の中心が暴れてしまっており、その力が末端に逃げてしまった過程で膝痛を発症してしまったと読みました。
では、何が理由でこうなったのか?
腹部を観てそれがわかりました。上腹部がかなり硬くなっており、これはかなりストレスを溜め込んでいるなあと感じました。
「Bさん。かなりお忙しかったのでは?ストレスまみれじゃないですか。」
「ここ数年、ノルマを高く上げて頑張っているんですが、思ったように成績が伴わなくて。」
「なんでそんなにノルマを課すんですか?何かあったんですか?」
「はい。実は随分前から主人が経営している会社が赤字続きになってしまい、家のローンの返済もまだまだあって。ここは自分が頑張らないといけないと思って、ノルマをかなり上げたのですが、そのプレッシャーからか逆に成績は上がらず、かなりのストレスまみれです。」
ただ、Bさんの操法を終えて立ち上がったところ、
「えっ?ウソみたい。痛みがない!」
私としては、失敗したなあと思いました。本当は原因となる問題を自力で解決してもらうことで、体の正しい使い方も覚えられ、正しい健康管理へと導きたかったのです。
とてもお忙しいようで、月に1度来られればいい方ですが、それでも私がアドバイスする中心に力を集めるための意識や体の使い方を少しずつ理解して実践しているようです。
また本人の体にあった整体の体操を教え、これも毎回チェックしていることもあるでしょう。
以来2年が経過していますが、膝の痛みは出ていないとのことです。
弾力のない体は、日々の疲労やストレスをダイレクトに受けてしまうことで、膝の問題に繋がりやすい
前回のAさんは年齢と疲労から膝痛を発症したのですが、Bさんはさらに大きなストレスで体の中心が崩れ、それが膝に来てしまったものでした。
お二人とも還暦に近い年齢。若い頃と違い、体の弾力も落ち、一度かかった疲れやストレスによる負荷はなかなか抜けず、そのまま大きなダメージとして残りがちです。
体の中心から一度逃げてしまった力は、そのまま末端に流れ落ち、弾力が無くなってきた年齢では直接その流れを膝で受けてしまい、あっという間に膝のトラブルとなった典型的な例でした。