仙骨ショックの例
仙骨ショックを知る
まだ指導室を構える前の頃、知り合いの紹介を受けて出張での操法を行っていました。ある時、いつもお邪魔していたお宅へ伺ったのですが、普段ならにこやかに対応していただいていた奥さんの表情に何か違いを感じました。早速操法を始めたのですが、何かが違う。その何かが気になりつつも操法を始めました。
正座での状態からお体の確認をした後、うつぶせでの確認に入った時、何故か臀部の状態を確認しようと、手を仙骨の上に軽く乗せた瞬間、「バリン!」という音がしました。それはまるでガラスが割れたような音でした。一瞬「えっ?何?」と驚いたのですが、即座に「仙骨か・・。割れたのではなく、浮いていたのが沈んだ音かもしれない。
仙骨はショックを受けると浮いてくると習ったけど・・」と思い、その奥さんに「最近、何かショックなことがありましたか?」と思わず口にしたところ、「実は先週、母が亡くなりました。」との返事が返ってきました。
操法後にあらためてお聞きしたのですが、とても大事なお母さまの看病を長年献身的に行っていたけれども、残念ながらお亡くなりになったとのことで、かなりショックを受けられたようでした。仙骨は、骨折や打撲、また火傷などで一瞬大きなショックを受けた時に浮いてしまうと習いましたが、こうした心のショックでも仙骨は浮いてしまうのかと思い、後日ある先輩にその話をしたのですが、「気を集中していると思わず手が行ったところに答えがあるんですね」と言われました。
実践の場で、仙骨ショックの意味合いをこうして覚えた、まだ「ひよっこ」の頃のことでした。
こうしたことを実践を通して身に着け、数年後には自分の操法室を持ち、さらには認定指導者となり、その後多くの方を観るようになりました。それから10年ほど過ぎた頃に起こったのがあの東日本大震災でした。
東日本大震災でのこと
あの震災では、私の操法室がある神奈川県の茅ヶ崎市でも、経験したことのない大きな地震の揺れがありました。ましてや震源に近い東北地方では、倒壊した建物も多数ありましたが、それ以上に強烈な印象として焼き付いたのが沿岸部を襲った巨大な大津波の映像でした。
人知の及ばない自然界の出来事による爪痕を思い知らされた事象でした。震源地から遠く離れた首都圏では、交通機関も軒並み停滞し、帰宅困難者を生み出したことも思い起こされます。
地震が発生してから1,2か月間は、突然やってくる大きな余震に思わず身をすくめてしまいましたね。また、計画停電が地域ごとに行われ、ロウソクやランタン、懐中電灯といった光の中で摂った夕食は、電気のある生活に慣れていた私達には、その大切さを思い起こされたのではないでしょうか。
そんな中、私の操法室ではいつも通り多くの方の体を診ていました。今でも思い出すのは、来る人来る人、みなさん体にショックの跡が現れていて、ほぼ全員に仙骨ショックを行ったことでした。さらに体に現れていたのは、胸椎7番の左です。ここも何か体にショックがあると必ず出てくるので、打撲や骨折の時などにはよく取るところです。
また、胸椎9番の右にも見受けられました。これは自家中毒を現しており、心のショックや不安が中毒化して肝臓の解毒作用に負担が来ていることを訴えているとみます。もちろん、意味もなく取るのではなく、あくまで体に現れている所を観て、経過も読みながら行います。
今回のコロナ禍では
あれから9年の歳月が過ぎ、今回のコロナ禍では体にどう現れているのかのヒントにもなります。私が思うには、今回の心への影響は震災のそれとはまた異なり、ショックというよりも大きな不安であり、震災時のあのお互いをいたわる絆というのが感じられず、むしろ人に対しては疑心暗鬼になってしまったようです。
不安な気持ちが強い人は、間違いなく先程の胸椎9番に現れてくると読んでいます。ここが委縮している人は、ちょっとした音にも過敏になったり、雷に極端に怯えたり、先端恐怖症といったものにも繋がっているはずです。
そのため、マスクをしていない人を見ると恐怖を感じてしまうこともあり、あちこちでトラブルの話が出ているようですね。まさに疑心暗鬼。人が人を信じられなくなるような大きな不安がいつまで続くのか、それ自体が不安と言えるのではないでしょうか。