肩甲骨や鎖骨には呼吸器の状態が現れる
呼吸器は上胸部から
いずれにしろ、風邪は呼吸器系の問題を伴います。そこで体を観ていくと、まずは上胸部です。ここは肺や心臓と密接に関係するところ。ここの椎骨が浮き上がると、肩甲骨が外に開き、結果として肩が前に入り込み、胸を圧迫してきます。その姿は見た目にも現れてくるので、患者さんが操法室に入った時の顔の表情や姿勢、一挙手一投足の動作、声の張り、匂いなども情報として無意識に捉えるので、「あれ?今日はどうしたのかな?」と感じます。
前胸部、特に鎖骨の状態で呼吸器を読む
初診の方も手で確認する以前に、この段階で大きな特徴を掴みます。「この人は一日中、座り放しの仕事をしているのかな」とか、「首や腰、手首に足首にトラブルがあるな」というところから、最初の一手が出てきます。こうした整体の見方から、どの程度呼吸器にきているかを確認するのに、前胸部に必ず手が行くのですが、その中で鎖骨の状態を観るのは非常に大事になります。鎖骨の状態で、呼吸器系の負担がどこから来ているのか、肺や気管支への負担、さらには肺炎になりかけているかの判断も整体法では行います。
お腹にも出てくる肺の急所
五臓の急所-「臍十字」で呼吸器を読む
前回書きました、風邪の最中に子守りで肺炎を起こしていた方の場合。この方はお腹で肺の状態を読みました。整体法ではお臍の周囲に「臍十字」という五臓の急所があります。そのポイントの状態の感覚で「肺の負担」が現れてきます。面白いことに、この方を診る前日にこの臍十字を中心とした特別講座があり、その感覚をしっかりと手で学んでいました。
こうしたことは私の場合よくあるのですが、それについてはまた別の機会に書きたいと思います。
腰・お尻と肺の関係
要の腰は呼吸器と関係する
呼吸器に負担がかかりやすい人の体は、こうした上胸部の状態に現れるのは言うまでもありませんが、それを支える腰にも出てきます。一日中、パソコン相手に仕事をしている方は、どうしても腰の力が弱まってしまいがち。腰は全ての要です。ここが崩れると、呼吸器系や首、頭部にも影響が出ますし、腰痛や坐骨神経痛に始まり、下肢の様々なトラブルにまで繋がってきます。
呼吸器はお尻にも関係している
また、お尻も呼吸器と関係しています。以前、鬱気味の女性を診ていたのですが、顔の表情や肩の力がなく、歩く姿も歩幅が狭く、呼吸が浅いといった、まさに元気のない状態が現れていました。この方は、ご主人が元々無口で怒りっぽい方だったのですが、定年後さらにその状態が強まってとても頑固になっていたとのこと。定年を契機にそのご主人が一日中一緒にいることになり、これがきっかけで奥さんが鬱になったようでした。
「複合体操」で深い呼吸が誘導され元気になった女性のケース
お尻を確認すると、筋肉が削げ落ちているかのようで、これでは上半身を支えられないなと感じ、しっかりとした腰を作るための指導をしたことが思い起こされます。ある時「複合体操」という別名「食べ過ぎ体操」を指導したところ、終わった後にはとても大きな呼吸をされ、表情も非常にすっきりとしていました。
この体操は、元は食べ過ぎ時の状態を解消するために、正座の状態から上体を後ろに倒して床に寝かすというのがベースになるのですが、下がっている腰が否が応でも持ち上がり、これにより肋骨が上に延ばされていくことで、圧迫を受けていた腹部が解放されてきます。結果として、深い呼吸を誘導することにもなり、この方の場合はこの体操がきっかけで徐々に元気になっていかれました。
お尻や腰が呼吸器ととても関係していることがわかったケースでした。